2007年06月21日

【シエスパ爆発】施設・業者に乏しい安全管理の自覚

 東京・渋谷の女性専用温泉シエスパ別館で2007年6月19日に起きた爆発事故から1日たった。現場からメタンガスが検出され、別館地下1階に充満したメタンガスになんらかの理由で引火して爆発が起こったととの見方が強まっている、同時に施設側の管理のずさんさも次々と明らかになってきた。

 テレビ報道の印象だと、天然ガスの危険性を認識して安全管理に責任を感じていた人は残念ながらゼロ。シエスパを運営していたユニマットビューティーアンドスパの社長とシエスパの支配人は、報道された会見を見た限り、責任を痛感しているとはとても思えなかった。

「温泉給湯に関するものは保守会社に一任する形となっている」(支配人)、「安全確認という部分では、毎日きちんと業者の方に委託してやっている中で通常と同じ中でで運営していたので、そういった異常はないと思っていた」(社長)とあくまで他人任せな姿勢だ。

 一方、保守管理を委託されていた日立ビルシステムも「委託されたのは温泉の温度などの管理で、天然ガスの安全管理は含まれておらず、原因などについてコメントできない」と、事件とは無関係の立場。下請け業者サングーの社長は「セパレーターの業務はやっていない」「うちの仕事はメーターの記録だけです」と語り、業務契約内容にも天然ガスの管理はないことを説明。当事者間で責任の所在が宙に浮いた格好になっている。

 毎日新聞によるとシエスパ別館の地下1階は施錠され、出入りできるのはサングーの担当者だけ。70代の嘱託社員が交代で常駐し、午後2時から3時の間に地下1階にある源泉槽のメーターを目視、地下水のくみ上げ量をチェックするのが仕事だったという。読売新聞朝日新聞によると、ガス検知器は存在しなかった。ガスセパレーターが正常に稼動していたかどうかは今のところ明らかになっていない。

 つまり、ガスセパレーターが設けられていたにもかかわらず、“素人集団”はその意味も安全管理の必要性もまったく認識していなかったのだ。ガスセパレーターを設置したところが説明を怠ったのか、説明しても「馬の耳に念仏状態」だったのかは分からない(その後の報道によると、掘削業者はガスの発生を把握し、ユニマット側に文書で伝えていたというから、後者の「馬の耳に念仏」だった可能性が大きい)。

 施設や業者の安全管理の認識が素人レベルだったと上、悪いことは重なるもので法制面からも安全が確保されていなかった。温泉法は温泉に付随する天然ガスについては規制の対象外。国が設けた基準や監督官庁もない。都は2005年2月に北区の温泉掘削現場で起きた火災をきっかけに温泉掘削中の「安全対策ガイドライン」をまとめたものの、開業後についての規制はなかった。

 シエスパと管理業者だけでなく、国、地方自治体、そして私たち入浴客も含めて今回のような事態はまったく予想していなかったといえるだろう。

 警視庁は20日、ユニマットビューティーアンドスパ、日立ビルシステム、サングーのほか、温泉を掘削した鉱研工業、シエスパを設計した大成建設本社の設計部門など10カ所を一斉捜査。東京都をはじめとする地方自治体は6月20日から温泉施設の実態調査に乗り出した。

 3人もの犠牲者が出て初めて対策が講じられるというのは悲しい話だが、3人の死を無駄にしないためにも、癒やしの場所を安心して利用できる体制が一日も早く確立されることを願う。

 また、より根本的な話として、温泉の新規掘削に対する認可基準をより厳しくする必要があるのではないだろうか。例えばシエスパのある渋谷区松涛のように都市部の建物が密集している地域では掘削を認めないなどだ。温泉はすでにたくさんあるのだし。

 そもそも温泉は自然の恵みだったはず。母なる大地をより深く痛めつけて温泉を搾り取るようなことを今のようなペースであちこち繰り広げていいものか、個人的には甚だ疑問だ。

【追記】6段落目を新たに書き加え、7段落目を手直ししました。この記事はしばらくの間、何か思いついたときに一部を書き足したり削除したりします。 
この記事へのコメント
朝日新聞の社説よりも読み応えがあった
Posted by 一読者 at 2007年06月21日 10:17
>一読者さん
 ありがとうございます。グダグダ書いているうちにまとまりがつかなくなってきました。

 本日ある読者の方からメールをいただきました。メタンガスの温室効果は二酸化炭素に告ぐそうで、大気中に放出するのが最善策のように報道されることに驚愕したそうです。私はそういう分野には弱いのですが、ちょっと調べたら確かにその通りみたいでした。

 東京周辺の大深度掘削温泉に入るときは、大地を深く掘削していることだけじゃなく、地球の温暖化を後押ししていることでも環境破壊に貢献していることを自覚する必要がありそうです。これを本文に付け加えたらさらにグダグダになってしまうでしょうねぇ。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年06月22日 23:32
ちょうど新潟で源泉からぶくぶくとメタンガスが出ているのを不気味に見てきた直後の事故だっただけに注意深く見ておりました。
確かに、経営者の管理責任が第一に問われるものですが、この問題は、経営者だけに押し付ける問題ではないように感じます。
そもそも経営者は、温泉に対する知識はあって当然かの様に言われますが、経営者はあくまで経営だけであり、そこまで期待してもどうかなと思うからです。
確かに、使用する温泉の事をしっかりと理解した上での利用が望ましいのは当然ですが。
問題は、法的整備や申請、掘削、分析、設計、施工、経営がばらばらなのが問題ではないかなと思います。
掘削業者や分析機関が設計施工にもっと助言さえしていれば良かったのではと思うからです。
テレビなどで、某研究所所長がでてましたが、いろいろと費評論する前に、なぜこうした状態に警笛を上げなければならないのではと感じました。
ぐだぐだ書いてすみませんでした。
Posted by 阿部滋信 at 2007年06月23日 20:19
>阿部滋信さん
 もちろん、何もしないで手をこまねいていた行政の責任は重いと思いますが、温泉を経営している人の認識っていうのはこの程度なんだとビックリしたのは事実です。先日まで大惨事が起きなかったのが幸運だったのかもしれません。

 癒しブームに乗って金儲けをしようといろんな人たちが業界に参入してくるのは自分たちの温泉信奉が背景にあるんだなぁと思い至り、自分も痛みを感じています。大深度掘削の開業情報をこれだけ次々に紹介しておきながら、大深度掘削はやめたほうがいいというのも矛盾していますよね。このブログやめたほうがいいのかなぁ。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年06月23日 21:08
宮田春美社長がシエスパに迎え入れられたのは昨年秋。ある意味では彼女はスケープゴート。主犯格=開業時の支配人はテレビチャンピオンの日帰り温泉女王になった春山ゆかり。彼女のブログが事故についてこう書いていたのをこの目で見た。

>地下のボイラー、天然ガス事故ってことは
>掘削業者と設備管理業者に問題があったんではと思うんですが
>この手で問い詰められないのが辛い。

ブログはhttp://blog.livedoor.jp/haruyama55/
シエスパの記事既に削除され炎上は回避。管理人さんはこの記事読んでいないのですか。
Posted by 部外者ですが at 2007年06月26日 13:16
>地下のボイラー、天然ガス事故ってことは
>掘削業者と設備管理業者に問題があったんではと思うんですが
>この手で問い詰められないのが辛い。

が本当だとすると恐ろしい認識の方ですね。
少なくとも、自らを温泉女王と呼んでおられる方が・・・
で女将を目指すらしいのですが、ちゃらちゃらとしたうわべだけの宿に終わりそうですね。
Posted by まだこれ at 2007年06月28日 01:22
>部外者ですがさん
 私は個人名を出してその人のブログの内容を云々するのは苦手なので、部外者ですがさんの書き込みにどう対応したものか悩んでおりました。本人が実名と経歴をネット上で明らかにしていることや事故に対する公共の関心からいって、安易に書き込みを削除したり伏字にしたりするのはよくないという判断をするまで時間がかかってすみません。臆病なものですから。

 それで質問の答えですが、そのブログの記事は読んでいませんでしたが、読者の方からメールで「グーグルにキャッシュが残っています」と教えてもらって読んだところです。

 事故が起きてすぐの段階で、しかも前支配人は海外にいらっしゃるということで詳しい状況を把握していなかったとは思いますが、それだけに正直な意見を書いた様子、ご指摘の3行を読んで複雑な心境です。

 それでも、事件の全容がまだ明らかになっていない段階で「主犯格」という言葉を使うのは行き過ぎではないでしょうか?

>まだこれさん
 本当にそう書かれていました。前支配人が天然ガスの危険性をどの程度認識していたかを示す重要な手がかりであることは間違いないと思います。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年06月28日 21:04
この事件で会見した経営者と支配人だという中年女性2人は、結局のところ会見ではまるで反省していませんでした。
あのような愚かな経営者がいるようでは温泉業界全体が悪印象を受けます。
はっきり言えば施工業者や管理業者の責任がどうのという段階で、完全に間違っているし経営者が全ての責任を取るのが常識である。今後は医師とか弁護士みたいに温泉管理技師のような資格をつくり、これに合格していない奴は温泉の経営ができないようにして欲しいですね。
しかもあの温泉の場所は渋谷でもどちらかといえば住宅街のようなところ。私の知り合いがあの近くに住んでいるのですが、周辺住民はあんな風俗施設のようなものには猛反発していたらしいです。例えば新宿の歌舞伎町あたりにつくることはできなかったのだろうかと言ってます。
この頃はカップルなんかがあの付近で記念撮影してるらしいですね。それにふさわしい場所ならほかに幾らでも在るのにねえ。
Posted by アンディー at 2007年07月01日 01:06
>アンディーさん
 資格制にするというのはいい考えかもしれませんね。spそて、この施設の責任者は誰と、有資格者の名前を張り出すようになれば、責任感も生まれてくるのではないでしょうか。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年07月01日 22:18
シエスパ解体で終わりではない
宮田や春山を刑事訴追して罰を下すべきだ
Posted by 通りすがり at 2007年07月11日 00:15
> そもそも温泉は自然の恵みだったはず。母なる大地をより深く痛めつけて

掘削だけでなく、汲み上げの際に源泉の能力いっぱいまで汲み上げずに、ゆとりを持たせて水位を高く保持していればガスは出にくいのに、ということもあるようです。

事件の全容がだんだん明らかになりつつありますが、今回の事故は防ぐ手立てがいくつもあったはずなのに、ことごとくそれを軽視したために起きてしまったようですね。

ただ、犯人探しをして責任を追及するだけに終わらせず、このような事故が二度と起きないような仕組みや体制をつくっていくことが大切だと感じます。被害にあった方々のためにも。
Posted by 望月 at 2007年07月11日 09:31
>通りすがりさん
 私はシエスパが営業を再開することになったら猛反対する論陣を張るつもりでしたが、その必要もなくなりました。責任問題は専門家に任せるべきだと思っています。続報をみつけたらこのブログでも紹介するつもりです。

>望月さん
 都内の温泉施設の方から揚湯制限に引っかからないようにするのが大変だという話を聞いたことがあるのですが、汲み上げ方によって天然ガスの発生を調節するという話は知りませんでした。教えていただきありがとうございます。

 爆発事故が起きた当初はテレビで伝えられる惨状にただただうろたえるばかりでした。その後の報道をみると「未然に防げたはずの人災」だったとしかいいようがなく、温泉を愛するものとして悔しくてしょうがありません。

 いろいろ考えていまだに混乱しています。自分は大深度掘削温泉を「まがいもの」とまでは言わないまでも、どちらかといえば軽視してきました。今回の事故で改めて自然の脅威を思い知らされた感じです。

 また「メタンガスを大気中に放出すればOK」という方向で話が進んでいますが、そのうち温室効果が問題になるのではないかという心配もあります。

 入浴客の立場で何ができるのか、何をすべきなのか…。答えを見つけるのは難しそうです。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年07月11日 20:39
温泉を愛してくださる皆様のご意見は、温泉資源を守る側の私どもに熱いメッセージとして届きます。

『温泉』とは一体なんでしょうか?
人間や動物にとっては、飲んだり入浴することで、体に良い影響を与えてくれる大自然の恵みです。
ただ、地球にとってはマグマの高熱を抑えてくれるラジエター役でもあります。海水や雨水が地下に浸透してマグマに熱せられ、地中に拡がり地表が高温になるのを抑えます。
その一部が自然に地表に現れ『温泉』として古来から利用されてきました。

これ以上無理に掘ったり、限りある地下資源(温泉)を浪費することは、地下の空洞化を進め地震や温暖化の原因にもなります。そんな観点から私は以前から大深度掘削温泉に反対でした。

ここで、温泉を愛する皆様に告白とお願いがあります。
本当の『源泉かけ流し』は1%にしか過ぎません。ほとんどは『源泉チョロ流し』です。わずかばかり源泉を流し入れたところで、表面の湯が入れ替わるだけで浴槽の中は変わっていません。よほどの源泉湯量が無い限り実際は不可能です。
ですから『源泉かけ流し』にあまりこだわらずに総合評価で選んで頂きたいと思います。
また、循環ろ過を採用している所のほうが、衛生管理が出来ている件数が圧倒的に多く見受けますし、源泉を大切に利用していただいていると感じます。

温泉効果は、泉質も大切ですが自然や人とのふれあい・非日常性・気候・刺激・空気・水などが相まって総合的に現れるものではないでしょうか。

施設側には、お料理・イベントや客室・浴室に趣向を凝らすだけでなく、安全管理・衛生管理・設備管理などの基本的インフラ整備をもう一度見直し、お客様の安心を回復していく取り組みを、微力ながらもお手伝いしてまいります。


Posted by 温泉管理士667号 at 2007年07月30日 15:10
>温泉管理士667号さん
 温泉掘削が地下の空洞化を進め、ひいては地震の原因にもなるということは考えたこともありませんでした。

 私が温泉に興味を持ち始めたころ、あちこちで温泉を掘削していることに気づき、『子どもの頃社会の授業で地盤沈下が深刻だと習ったけれど大丈夫なんだろうか』と思い、温泉に詳しい人に聞いてみたことがあります。「今は技術が進歩しているから地盤沈下の問題はない」というような返答に安心し、それ以来深く考えることはやめていました。

 温泉好きが「源泉かけ流し」という言葉に弱いことは私自身、痛感しています。業界のほかの方からも、「かけ流しをうたっていても言葉だけで、実際は衛生面で問題のあることろも多い」という話をうかがったこともあります。

 このようなブログを主宰している私に求められることがあるとすれば、そうした業界の真実を温泉好きに伝えることなのかもしれません。ただ、読者に納得してもらうには数値的な裏づけが必要で、単なる入浴客の立場にある私にはそれを入手することができません。

 示唆に富むコメントをありがとうございました。自分のやりたいことをやるための知識が徹底的に不足しているということが段々と分かってきました。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年07月30日 23:08

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