2007年02月25日

【コラム水質汚濁防止法】規制強化の先送りだけでは不十分

 2001年の水質汚濁防止法の一部改正に伴うフッ素やホウ素の排出規制が2007年7月1日から強化される見通しだが、環境省が規制の強化を再び先送りするのではないかという観測が一部で浮上してきた。もっとも、延期だけでは抜本的な解決にはほど遠いというのが当ブログの考え方だ。

 TBSテレビは2月23日夕方のニュース番組内で「名湯存続の危機−源泉かけながしと排水基準」と銘打ったコーナーを放映。群馬県の草津温泉や新潟県の松之山温泉を例として取り上げ、規制が強化されればかけ流し温泉の存続が危うくなると伝えた。

 水質汚濁防止法が2001年に改正されたにもかかわらず、これまで厳格な基準が適用されてこなかったのは、改正と同時の遵守は困難と認められた旅館など40業種に対して猶予期間が認められたからだ。猶予期間は当初2004年までの3年間。

 その後旅館を含めた26業種に対しては猶予期間がさらに3年間延長された。旅館の現行の排出基準はホウ素が排水1リットル中500ミリグラム、フッ素50ミリグラムと、水質汚濁防止法改正前の水準。計6年の猶予期間が2007年6月末で切れ、7月からはホウ素10ミリグラム(海域排出なら230ミリグラム)、フッ素8ミリグラム(同15ミリグラム)と規制が強化される。

 TBSによると、水質汚濁防止法が改正されたきっかけは1998年にWHO(世界保健機構)が出した報告。アフリカや中国でフッ素やホウ素を含み水を大量に含む井戸水を飲んだ人が体調を崩したというのだ。番組に出演した環境省の担当者は「ホウ素を高濃度で摂取すると嘔吐、腹痛、下痢といった症状を発生する」「フッ素は飲用水として飲み続けると歯が黒くなる」と説明した。

 この担当者が日本について「現れた症状がホウ素なりフッ素物質によるという、きちんとした因果関係を持った報告はほとんどない(分かりやすくするために語順入れ替えあり)」「健康被害がただちに発生する恐れは非常に少ない」と淡々と述べているのを聞き、少なくとも温泉旅館に関する限りこの法律改正は必要だったのだろうかと首を傾げてしまった。

 ホウ素・フッ素の除去設備は3000万〜4000万円とされている。2月23日号の週刊ポストによると、最近では500〜600万円程度の装置も開発されているそうだが、それでも個人経営の小規模旅館がポンと払える金額じゃない。まして設備の維持費もかかる。設備の導入・維持に関する国からの助成金は出ないのだろうか?

 化学物質が混ざっている工場排水と違い、大地から湧いた温泉を自然に返すという行為に対して国が「NO」というのなら、国の負担で対策を講じればいいのに。

 番組では既に対策を講じている温泉も紹介。新潟県・川口温泉「和楽美の湯」で1日85トンの井戸水で温泉排水を薄めてホウ素の濃度を下げているという。除去装置の導入費用はゼロだろうが、井戸水による希釈だってそれなりに費用はかかるだろう。苦肉の策として実施している施設側には申し訳ないのだが、水資源の無駄遣いとも思えてしまう。

 仮定の話として、新基準に引っかかる旅館が「じゃ、ウチも制限を守るために井戸水で希釈します」とこぞって宣言したら、果たして環境省は歓迎するのだろうか?「水を大切にするために水を無駄にする」っていうことにならないのだろうか。こんなふうに考えると混乱しちゃって規制の意味が分からなくなってきた。

 TBSの番組は最後に「新基準はあまりに実態にそぐわないとの声の高まりをを受け、環境省は適用延期も含めて再検討している」と伝えた。温浴業界関係者のブログ「温泉や」でも既に2月9日のエントリー「周知期間延長?」で「温泉排水規制が、今年の7月1日に強化される問題で、3年前と同じく周知期間延長となる可能性が高いようです」と書いている。

 規制強化が再度先送りされれば、温泉旅館の経営者はひとまずホッと息をつけるだろう。でも、猶予期間が2、3年あるいは5年延長されたとして、その間に導入維持の負担が小さいにもかかわらず除去効果に期待できる装置は開発されるのか。

 個人的には旅館を水質汚濁防止法の適用対象から外す以外に解決の道はないように思うのだが、かけ流し温泉好きのワガママにすぎないのだろうか?

 TBS番組の録画は友人に録画・提供してもらいました。

【参考=環境省のプレスリリース】
水質汚濁防止法施行令の一部を改正する政令について(2001年6月7日)
水質汚濁防止法の排水基準を定める省令の改正(暫定排水基準の見直しについて(2004年5月31日)

【関連バックナンバー】
宮城・鳴子温泉郷5団体が温泉排水の基準見直しを県に要望(1月31日)

【追記】あまりにもベタなタイトルだったので、タイトルのみ手直ししました。(2月28日)
この記事へのコメント
あなた一体何者?
環境科学の専門家とは思えないが
そこらへんの有象無象とも違う。
自らのプロフィールを明らかにするべき。
Posted by タカハシ at 2007年03月18日 21:06
>タカハシさん
 誉めていただいていると受け取ってよろしいのでしょうか? そうでしたら、ありがとうございます。でも、私は有象無象の1ブロガーを自認しております。

 これは私の自己満ブログですから、プロフィールや本名などを出さなくても、私と私のブログを信頼してくれる人に読んでもらえればそれでいいのです。どうにかして読者を増やそうとか有名になりたいとか、そういう考えは毛頭ありません。

 特定の個人を批判するようなブログなら、ある程度は自分の個人情報を出さなくては卑怯だと思いますが、このブログは情報を垂れ流すのが目的です。

 コラムのコーナーだけは情報の垂れ流しとは違いますが、大上段に構えるつもりはなく、ただ思いついたことを好きに書いているだけです。これからもこのまま「編集人=らくだ」としてやっていくつもりですので、ご理解ください。
Posted by らくだ(編集人) at 2007年03月18日 23:08
今の所どの様な方法で低減させるのか解らないみたい。
当社で利用しているろ過材で来年試験しようと考えています。現在、北海道の温泉は認識が無い様です。
Posted by (有)エコ・リード at 2008年12月05日 10:36

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