2008年12月29日

【コラム】迷走する長湯温泉

 長湯温泉が「日本一の炭酸泉」を再宣言してから1年あまり。長湯温泉協会 の公式サイトには「日本一の炭酸泉」の語句と一緒に泡だらけのトマトの写真が誇らしげに掲載されている。その下には「長湯温泉イメージビデオ」として手にまとわりつく泡の画像も。さまざまな条件を綜合的に考慮した上で長湯温泉はやはり「日本一の炭酸泉」と言われれば「はい、そうですか」と答えるしかないが、これだけはいいたい(書きたい)。「日本一」の言葉と泡の画像を結びつけるのは不適切であり、広報戦略としては正しくないやり方だ。

 そもそも長湯温泉で写真のような泡付きがあるのはラムネ温泉館のラムネ温泉だけ。長湯温泉観光協会に問い合わせたところ(長湯温泉協会は電話に出なかった)、ラムネ温泉以外では「万象の湯」の水風呂に少し泡付があるものの、ラムネ温泉の泡付きのレベルとは比べ物にならないほど少ないとのことだった。

 これでは長湯温泉協会はわずか1カ所でしか見られない現象を長湯温泉全体のイメージ写真として使っていることになる。「長湯温泉というのは泡だらけの温泉だ」という誤解を招く恐れがあり、以下に述べる個人的な体験からいっても危険だ。

 
 
【家族の不満】

 私が長湯を訪問したのはまだ温泉に興味を持って間もない頃。温泉嫌いの家族が一緒に行くことを承諾したのは、各種温泉ガイドブック等で見た「体にサイダーのような泡がつく温泉」に興味を持ったからだった。

 訪ねたのは寒さの厳しい時期だった。ラムネ温泉館の前まで行ったものの、泉温が30度ちょっとしかないことを知った家族は「そんなぬるい風呂に入ったら風邪を引いてしまう」と尻込みし、無理強いもできずに他の適温の温泉施設を数カ所回った。

 どこも茶色く濁った炭酸水素塩泉だった。家族の感想は「どこの湯も濁っていて、アワなんて全くない。仮にあっても、あんな泥水みたいに濁っていたら見えるはずない。だまされた!」だった。

 私自身はいいお湯だったと思ったこともあって、「ラムネ温泉に入らなかったのが悪いんだよ」と長湯の味方をしたものの、どことなく釈然としない思いがしたのは事実だ。情けない事ながら当時は『専門家が絶賛する長湯温泉にケチをつけていいはずない、家族は温泉を分かっていないのだから、長湯温泉の批判をするなんておかしい』という意識が心のどこかにあった。

 でも今にしてみれば、家族は正しかったと思っている。事前のイメージと実態の格差に「だまされた」と感じたのは、家族が悪いせいじゃない。長湯といえばサイダーみたいな泡付きが視認できる温泉だと思い込んでいる人は今だっているはずだ。その人たちが実際に長湯を訪問したら私の家族みたいにガッカリする可能性もある。長湯温泉の人たちはその危険性をまったく想定していないのだろうか。

【世界屈指の炭酸系エリア??】

 そんな個人的な体験があったせいで、2007年5月に大分県が「日本一の炭酸泉」の表記を使わないようにと行政指導に乗り出した際も個人的には全く驚きはなかった。むしろ2007年12月に、温度や湧出量、濃度などを総合的に判断すれば「日本一」と再宣言した上で泡の写真を持ち出したことに心底驚いたし、失望もした。

 さらに驚いたのは、長湯温泉協会公式サイトの「炭酸泉の特徴と長湯温泉」のページ最下部に「『「目に見える炭酸ガス』はラムネ温泉の登場で注目を集めたが、『炭酸泉イコール泡の付着する温泉』という過度なイメージが消費者に浸透した」という記述があることだ。過度なイメージが消費者に浸透したと認識しているのだったら、その解消に努めてもよさそうだが、トップページの画像を見る限り、実際にはそのイメージをさらに強化する意図があるように思えてならない。

 広報の基本は「正しい情報を誤解のないよう分かりやすく伝える」ことだ。長湯温泉のやり方は消費者に正しく適切な情報を提供することよりも、経営者視点で自己擁護を優先しているように感じられる。

 長湯では新たに「世界屈指の炭酸系(温泉)エリア」というキャッチコピーを利用する案があるとも報道され、実際にそうした言葉も見かけるが、「世界屈指」「炭酸系」「エリア」とどれも曖昧な言葉で、「日本一の炭酸泉」に比べれば意味が分かりにくい上に消費者に訴えかけるパワーも小さい。

 さらに「温泉」という言葉抜きに「炭酸系エリア」とされちゃうと全く意味不明で苦笑するしかない。周りの人に尋ねて回ったところ意味を正しく理解する人は少なく、「土壌に炭酸成分が混じっているのが炭酸系エリア」と解釈する人もいた。「正しい情報を分かりやすく」という原則から一段と遠ざかっていると言わざるを得ない。

 長湯温泉は好きな温泉地だが、少なくとも泡付きの写真をイメージとして使っている間は再訪しないと決めている。

【最後のおまけ】
 1年ほど前に書きかけていたこのコラムを今になって不完全ながら公開しようと思ったのは、ブロガーというのはアンデルセン童話の「裸の王様」に出てくる子どもであるべきだと思うからだ。様々なしがらみや利益関係に縛られがちなメインストリームのメディアや専門家は、あの童話でたとえれば大臣といったところだろうか。

 何のしがらみもない自由なブロガーだからこそ、王様が裸に見えたら「裸だ!」と言えるのだと思い立った。ブログをやってきた意味ってそんなところにあるのではないだろうか。文章を練る時間がなくて論理展開も甘いのは承知しているが、ブログをやっているうちに公開したほうがいいと思って公開に踏み切ることにした。後日手を加える予定。
  
【過去の関連記事】
大分・長湯温泉が再び「日本一の炭酸泉」を宣言(2007年12月7日)
大分・長湯「日本一」表記の復活要望相次ぐ−温泉サミット(2007年6月15日)
大分・長湯温泉に行政指導−自称「日本一」はダメ(2007年5月11日)
この記事へのコメント
長湯温泉って今年初めて行きましたけど普通の人から見たら広告が突出してるように見えるんでしょうかね。
ラムネ温泉とかガニ湯だと炭酸泉を楽しめますが確かに他のお湯は???な感じですよね、悪いお湯じゃないんですけどね…。
九州の温泉地は何とか遠方から人を呼び込むために必死なので広告も誇大になりがちなのかなぁとも考えちゃいます。
長湯は交通手段も決して良好とは言えずワザワザ行くぞ!って気にならないと行かなそうな場所ですよね。
そんな気にさせる為にも若干の誇大広告は許して欲しいなぁと言う元九州人の個人的な願いでもあります。

それと日本一の炭酸泉は七里田温泉だと僕は思ってますよ。(笑)
Posted by ぐらむ at 2008年12月30日 23:29
あなたは温泉のことを何も知らない。いつもそう思う。長湯のことも知らない。書いていることは間違い。今は営業していないが、ラムネより炭酸が多いところがある。知っている人は知っているのにあなたは知らない。なのにラムネだけと書く。百万人のブログなんていわないで。恥ずかしいか。
Posted by そんなバナナ at 2008年12月31日 01:51
長湯で炭酸が本当に多いとこはどこだかしってる?1箇所じゃないんだよ。知ってる人は知ってる。知らないのに、知った風に書かないでよ。
Posted by あのね at 2008年12月31日 02:03
ここは会員制?
Posted by あはは at 2008年12月31日 02:09
長湯は関係ないです。プログで100万歌うなら変でしょ。
わかりますか?これが放送、新聞社で成立する話ですか。
個人も法人も関係ないことをネットでも自覚するべきです
Posted by まじめに at 2008年12月31日 02:13
長湯は関係ないです。プログで100万歌うなら変でしょ。
わかりますか?これが放送、新聞社で成立する話ですか。
個人も法人も関係ないことをネットでも自覚するべきです
Posted by まじめに at 2008年12月31日 02:15
編集人さん。いつも温泉ニュースありがとうございます。コラムも楽しく読ませていただきました。上げ足を取るようなコメントもついているようですが、コラムの主旨を揺るがすようなものではないと思います。気になさらないでくださいね。
Posted by いつもお世話になっています。 at 2008年12月31日 08:24
>ぐらむさん
ご無沙汰しております。私は広告・宣伝畑を歩いたことがないものですから、誇大広告という言葉は頭に浮かばなかったです。なるほど、そういう見方もできるのかもしれません。

自分はつい、「広報」という観点で物を考えてしまいます。それで頭に浮かんだのは「モラル」という言葉でした(最近は「コンプライアンス」という言葉を使う人が増えていますが、まだ定義が定まっていないように感じられます)。

我が家は公共交通機関で湯めぐりをしております。長湯へは大分からバスで向かい、一泊して帰りは豊後竹田に抜けました。確かに大変でした。

私にとって長湯で一番印象に残ったのはお湯ではなく、下校途中の小学生が「こんにちは!」と元気に挨拶してくれるような、のどかな空気が流れているところでした。

七里田の下湯でしたら、各種数値などを持ち出さなくても「炭酸泉日本一」にケチをつける人はいないような気がします。

>そんなバナナ〜まじめにさん
同一人物による複数ハンドルの使い分けは、いつもならサクッと消していますが、今回は最後の記念に保存しておこうと思います。

泡だらけの写真を見て長湯に行って「泡がつくのはラムネ温泉だけか〜、ガッカリ」という人に向かって「あんたは温泉のことを何も知らない。今は営業していないところだが、ラムネ温泉よりもすごいのがある」と言っても納得してもらうのは難しいと思います。

「放送、新聞社でも成立する話」というのは何が成立するのか意味不明ですが、記事中で挙げたアンデルセン童話にたとえればメディアは大臣で私は子供です。ただ、私はこブログを個人メディアと認識しており、このコラムも営業妨害で訴えられる可能性を意識しながら書きました。ご心配には及びません。




あ、ついマジレスしてしまった…。

>いつもお世話になっております。さん
お気遣いありがとうございます。このコメント欄は承認制にしており、上の一連のコメントは私が承認した上で表示させております。

自分の意見を書けば、上記のような人物が現れるだろうな、とは思っていました。これで最後だし、何も書かずにやめていくよりはずっとよかったと思っています。どうもありがとうございました。
Posted by らくだ(編集人) at 2008年12月31日 10:13

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